「20代は何をしていましたか」

 あと数か月で30歳。

 「20代は何をしていましたか」

 他人に「20代は何をしていましたか」と聞かれてもどう答えたらよいのか分からない。大学ではなんとなく語学や社会学について学ぼうと考えていた。しかし明確な目標を持てなかった事によるものが大きいと思うが、結局今に残るような財産を築くことはできなかった。勉学以外においても環境に能動的に順応していくことを拒否したため、人脈も何もない。遊んですらいない。

 学校を卒業し就職した後も、社会で学んだことなど些細なことに過ぎず、自分自身に自信が持てることは何もない。

 では本当にこの10年間でしてきたことは何も無いのかというと、よくよく考えると一つだけ人よりも多くしてきたのではないかということがある。「悩む」ということである。人よりも多くしてきたというのは言い過ぎかもしれない。ただし「人並みに悩んで生きてきましたか」と聞かれれば唯一自信を持って「はい」と答えることができる。

 学生時代、学校生活に何の興味も持てなかったことから授業には出ず図書館で本を読んだり映画を観て過ごすことが多くなっていった。10代の頃は教養に触れる機会がほとんどなかったので、そういったものから得る知識や教養は自分の空っぽの頭にはとても新鮮で刺激的だった。好きな作家や映画評論家のトークショーにも足を運んだ。

 知識が少しずつ増えたことで、自分自身のことや社会問題について考えることも多くなった。そして、悩んだ。

 10年間、悩み続けた。その結果、30代を目前として未だに今の自分に何も誇れるものがない。

 自分に必要なものは何か。

 「書を捨てよ、町へ出よう」。今こそ、そのときだ。

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