映画『さようなら、コダクローム』
5月1日火曜日、TBSラジオ『赤江珠緒たまむすび』で町山さんが映画『さようなら、コダクローム』を紹介していた。早速鑑賞。とても良い映画だった。
紹介の時点から映画のクライマックスは想像でき、展開も概ね予想通りのものであった。長年相容れなかった父子が旅を通じて次第に心を通わせていく。めくるめく展開があるような映画ではない。それでもこういう映画は好きだ。特に心に響いた場面がある。
彼は確かに父を憎んでいた。それでも仕事を投げ打ってまで怒りという感情を抑えることが出来なかったのはなぜか。
憎いはずの父(エド・ハリス)が仕事上重要な相手から嘲笑されたとき、主人公のジェイソン・サダイキスが静かに怒りをあらわにする。うまくいきかけていた仕事は失敗し、結果的には職を失う。
彼は確かに父を憎んでいた。それでも仕事を投げ打ってまで怒りという感情を抑えることが出来なかったのはなぜか。
私は主人公が父に対するアガペーという感情を心の奥底に持っていたからではないかと思う。この感情は普段意識することはめったになくとも、本当に大事な場面で表面化することがある。恋人や友人にではなく、普段意識することが少ない家族間に実は多く見られるのではないか。事故や震災があったときに真っ先に頭に思い浮かべる人は誰か。
長年父について考えることなど無く、むしろ憎んでいると思っていた人にでさえこういう感情があったことを主人公は知る。非常に重要な場面であったと思う。
ところで、父(エド・ハリス)の看護師役に私の世代だとドラマ『フルハウス』で有名なオルセン姉妹のエリザベス・オルセンが出演している。薄化粧でメディアで見る印象と違ったのではじめは気が付かなかった。
強く自立した女性という印象で、とてもよかった。